2016年7月31日日曜日

太った豚

 往々にして年寄りはイージーな旅をしますね。若い人たちから見ると、金に飽かして、贅沢なことをしてやがる、というように見えますね。若い時に大金を持っているっていう人はちょっと普通じゃない、という風潮に育った私には、若者は極貧の中でも旅に行け、という感覚を持っておりました。

 爪に火をともしても旅行をしろと勧めたいなと思っていました。それが自分を見る良い機会になるし、様々な価値観を知ることになると。しかし、それはまったく情報が入ってこなかった自分の若い時の環境を元に語っておりますな。今や全然状況が違います。

 しかし、それでも、やっぱり現地に足を踏み入れてみないと、本当のところはわからないんですね。それだけは時代が替わっても変わらない。

 残念なことには年寄りになってようやく動けるようになってみたら昔のようには行かないんですね、これは。ドーミトリーの下のベッドに誰が寝ているかわからないような状況では寝られないんです。夜中には必ずトイレに眼が覚めるわけだし。しかし、そんな状況は若者にはとてもわからない。想像すらできない。

 もう昔の話ですが、東大の某総長が卒業式で「太った豚になるよりはやせたソクラテスであれ」という言葉を贈ったのが話題になったことがあります。

 豪州のナラボー平原にある途中の駅に「インディアン・パシフィック号」が水の補給のために停車した時に、汽車から降りて、戦闘の機関車の写真を撮りにいったら、傍のベンチに「私は太った豚にはなりたくない、バイクで横断!」と珍しく日本語のいたずら書きがありました。あぁ、多分若者があの400kmをバイクで走ったんだな!途中で遭難しなかっただろうかと思いながら、そして若者の直球は良いなと思いながら、もうそんなことのできない人たちだって行ってみたいところがあるんだよ、といって上げたかったなぁ。


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