見物予定策定担当の連れ合いによるとKlotenからそれほど遠くないところに博物館や美術館がいくつもある面白い街があるというので、今日は一日そこへ行ってみようということに衆議一決。Klotenに止まる唯一の電車、S-7でZurichと反対方向へ走ると、その終点がWinterturという駅です。「ヴィンタートゥ」と発音するべきでしょうか。
なんでも昔は相当に発展した街のようで、産業が推移するに従って様々な有為転変があったというのは昔もいまも変わらないわけで、いまじゃ、国際的に注目を浴びることもないけれど、昔はすごかったんだゾォ、という街だそうです。
その中でもオスカー・ラインハルト美術館というのはなんでも別館もあって見ておかなくてはならないという話だというので取るものもとりあえず駆けつけた次第です。正式にはこちらは「オスカー・ラインハルト美術館アム・シュタットガルテン」と呼ぶのだそうで、「オスカー・ラインハルト・コレクション・アム・レマーホルツ」という方は現在は閉鎖中だという話でした。閉鎖の理由、閉鎖中のコレクションの公開がこっちで行われているのか否かについては聞き漏らしました。
というのは概ね、どこでもそうなのですが、スイスのこうした施設におられるレセプショニストの方はほとんど年配の女性で、愛想はとても良いのですが、それほど英語がお上手ではありません。今のスイスの学校ではかなり小さい頃から英語を教育しているというので、若者はそんなことはないのですが、往々にしてこういう場面ではコミュニケーションに多少の難しさがあります。そこがくだんの米国人女性がアイスランドの方が英語は通じる、といっていたところでしょう。その点では私も同意します。
さて、その「オスカー・ラインハルト美術館アム・シュタットガルテン」ですが、一昨年まで施設の改修工事で2年間ほど閉鎖していたそうです。なるほど、それで(日本でいう)2階から3階へ上がる超モダンな階段なんていうのもその時に作られたのでしょう。びっくりしました。この階段そのものが「アート」と呼んでも良いくらいです。
Oskar Reinhartというひとは1985年にWinterturに生まれで1965年に80歳で他界した人ですから、まさに私の好きな絵画と重なる時期の人のようです。なにしろ生まれが大金持ちの家庭だったそうですが、ゴッホを買った日本の某大金持ちが「あの世までこの絵を持っていく」と馬鹿なことをいったのとは全く雲泥の差で膨大なコレクションをここまで残して連邦政府に移管したのだそうです。こんな話でも世の中には土俵の異なるところで発想をもっていた人もいるんだと、思い知らされますねぇ。
スイスの画家の作品はドサッとあって、私にとっては嬉しい限りでございます。
この美術館は裏がシュタットガルテンで、ちょうど日曜日ですから好天気の下、盛りをちょっと過ぎたバラ花壇が揺れる芝生にみなさん思い思いに楽しんでおられるのを見ながら持参の(昨日の売れ残りで半額の)サンドイッチのランチを楽しみました。
実は美術館だから出ようとするとそこにずいぶん昔のグライダーを引っ張り上げている写真を使ったポスターがあって、こりゃ面白そうだなぁと受付の方に(おや?さっきの方と違う方になっている)あれはどこにあるんですか?とお伺いすると、ここのパンフレットの裏に書かれている地図で、「この辺ですよ」と印をつけていただいた。これをもっとちゃんとお伺いしておけばよかったのに、わかったつもりになって、「はい、はい、ありがとぉぉ」と出てきちゃった。だから、歩き始めの方向としては全く間違いがなかったのだけれど、肝心の先の方でわかんなくなっちゃった。
あとで気がつくとかなり良いところまで行っていたのに、曲がるところをほんのわずか早すぎてしまった。これで、小一時間無駄にしたけれどようやく到着。展示のタイトルは「スポーツ写真報道のパイオニア」というもので、Jules Decrauzat (1879-1960)という写真家の主に戦間期におけるスポーツシーンの写真で、とても面白い。あんな時代に自転車レースだとか、カー・レースが行われたということそのものでもうやられちゃう場面の連続です。展示されていた写真の絵葉書になったものがたったの6枚しか売られていないのはとても残念でした。
別館で展示されていた現代ものは私には全く理解不能、とはいわないけれど、私には自己満足としか思えないものでした。あかんのです、現代アートは。
そういえばスイスにもオランダと同じようにMuseum Passという年間有効のパスがあるのだそうですが、これは150フランくらいするんだそうで、それがわかっていたらBasel滞在時から活用できたのにねぇと調査不足を悔やみました。
写真博物館を出ようとすると遠くで雷の音(これを遠雷と称しますなぁ、日本語は美しい!)がします。スイスは山国ですから、こんなに急に暑くなるとすぐさま雷になってしまうんでしょうか。これはやばいぞとMurrenを思い出します。バスに乗って駅にとって返します。S-7の電車に乗っている間に雨の気配です。うわ、追いつかれちゃったかな?と思っていたらKlotenに到着すると、もうそれこそ「篠をつくような」大雨です。雨なんてものじゃない、バケツの底をひっくり返し続けております。地下通路からホテルまでのほんの数mを飛び出す気にならない。しばらく様子を見ていましたけれど、らちがあかない。
駅の反対側(こちらが表だったんです)へ行ってみたら、多くの人が降り込められて雨宿りをしていますが、その傍ら、小さなコンビニのようなお店の前に置かれた椅子とテーブルはいつもたむろってビールを飲んでいるじいさんたちが酔っ払ってワァワァやっています。
その後小止みになった雨は月曜日の朝まで降り続け、すっかり寒気を呼び戻しました。
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